生まれ年ワインは「飲む記念品」ではなく「飾る記念品」として受け取ると、後悔が少なくなります。特に60年・70年熟成のものは、正直に言えば飲んで美味しいとは限りません。20年以上この仕事をしてきたアトリエコロが、よそでは書けない本音をお伝えします。
「なんか酸っぱい気がするんですが、腐っていませんか?」
10年ほど前のことです。古希のお祝い(70年熟成)の生まれ年ワインをご購入いただいたお客様から、開封後にお電話をいただきました。
「なんか酸っぱい気がするんですが、これ腐っていませんか?」
これは腐敗ではありません。長い年月をかけてワインが熟成するなかで生まれる「熟成香」と呼ばれる独特の香りと味わいです。フレッシュな果実の風味は薄れ、紅茶やドライフルーツ、革や土のような複雑な風味に変化します。初めて飲む方には「酸っぱい」「変な味」と感じることがあるのは、ある意味当然のことです。
でも、このエピソードには続きがあります。
そのお客様にご説明したあと、少し間があって、「……なるほど。じゃあ飾っておきます」とおっしゃいました。それがたぶん、正解だったと思っています。
正直に言います。古いほど美味しいわけではありません
ワインは熟成するほど価値が上がる——そういうイメージがありますが、これは半分だけ正しいです。
アトリエコロで長年お客様にお届けしてきた経験から言うと、飲んで美味しいと感じる方が多いのは、20〜30年前後の熟成ワインです。60年・70年熟成になると、品質が保たれているものでも、飲み慣れていない方には独特すぎて「美味しい」とはなりにくいことがあります。
アトリエコロではよく、こんなふうに言っています。
「ワインも人間と同じで、熟成されすぎないほうがいい」
還暦(60年)や古希(70年)の生まれ年ワインを探していらっしゃる方には、少し意外に聞こえるかもしれません。でもこれは、商品の価値を下げたくて言っているのではありません。受け取る方に「なんか変な味だった」と思われないために、正直にお伝えしたいのです。
だからこそ、古い生まれ年ワインは「飲む一本」というより、「その年と一緒に時を重ねてきた記念品」として飾ることをおすすめしています。名入れ彫刻を施したボトルは、飲み終わったあとも手元に残ります。棚に飾って、節目のたびに眺める——それが、この商品の本当の使い方かもしれません。
贈る側ともらう側のジレンマ
生まれ年ワインには、少し難しいところがあります。
贈る側は「特別な記念品」として選びます。でも受け取った側は「お酒」として受け取ります。「開けて飲むべきなのか」「飾っておくべきなのか」「どう保存すればいいのか」——そういった戸惑いが生まれることがあります。
実際に、受け取ったお客様から「冷蔵庫にずっと入れておけばいいですか?」というお問い合わせをいただいたことがあります。冷蔵庫でも短期的には問題ありませんが、長期保管には向いていません。温度変化の問題や、乾燥しやすいためです。
アトリエコロでお伝えしているのは、「冷暗所での保管」です。具体的には次のような環境が理想です。
| 条件 | 目安 |
|---|---|
| 温度 | 13〜15℃(一定していること) |
| 湿度 | 70〜75%程度 |
| 光 | 直射日光・蛍光灯を避ける |
| 振動 | できるだけ動かさない |
| 保管方向 | 横置き(コルクを乾燥させないため) |
ワインセラーがあれば理想ですが、なけれ冷暗所に保存してください。夏場の室温には特に注意してください。
贈るときにひと言添えるとよいこと:「冷暗所で保管してください」「飾るだけでも大丈夫です」という言葉を添えると、受け取る方の戸惑いが減ります。アトリエコロでは、保管のしおりを同梱しています。
それでも飲むなら、知っておきたいこと
「せっかくだから飲みたい」という方のために、開ける前に知っておくと安心なことをお伝えします。
澱(おり)について
ヴィンテージワイン、特に赤ワインはボトルの底や側面に黒っぽい沈殿物が見えることがあります。これが「澱(おり)」です。タンニンなどが結晶化したもので、飲んでも害はありませんが、口に入ると渋みや苦みが強くなります。
飲む1〜2日前からボトルを立てておき、注ぐときはゆっくり傾けて、底の澱がグラスに入らないようにしましょう。スマホのライトをボトルのネック部分に当てると澱の位置が確認しやすくなります。
温度について
| ワインの種類 | 飲み頃の温度 |
|---|---|
| 赤ワイン(フルボディ) | 16〜20℃ |
| 赤ワイン(ライトボディ) | 12〜14℃ |
| 白ワイン | 8〜14℃ |
赤ワインは、野菜室などで保管し、飲む1〜2時間前に室温に出しておくのがおすすめです。急いで温めようと湯せんにかけるのは避けてください。
デキャンタージュについて
ワインをボトルから別の容器に移し替えて空気に触れさせる「デキャンタージュ」は、澱を除きながら香りを引き出すために有効です。ただし、繊細な熟成ワインは空気に触れすぎると風味が壊れることもあります。古いヴィンテージは短時間にとどめるか、そのまま静かに注ぐ方が無難な場合もあります。
飲み残したときの保存
開けたら早めに飲み切るのが基本です。飲み残す場合は、コルクを戻して冷蔵庫(野菜室)に縦置きで保存し、3日以内を目安に飲み切ってください。残量が少ない場合は、小さなボトルやペットボトルに移して空気との接触を減らすと長持ちします。
まとめ
Q. 還暦・古希の生まれ年ワイン、飲まずに飾るだけでもいいですか?
むしろそれが自然な選択です。60〜70年熟成のワインは、飲み慣れていない方には味が独特すぎることがあります。名入れ彫刻を施したボトルは飲み終わったあとも手元に残りますし、飾ったまま節目のたびに眺める——それがこのギフトの本当の楽しみ方かもしれません。
Q. 生まれ年ワインを贈るとき、受け取る側に何か伝えておくことはありますか?
「冷暗所で保管してください」「飾るだけでも大丈夫です」のひと言を添えるだけで、受け取る方の戸惑いがぐっと減ります。アトリエコロでは保管・飲み方のしおりを同梱していますが、贈る方からの言葉があると、より安心して受け取っていただけます。
Q. デキャンタがない場合、代用できるものはありますか?
麦茶用のガラスポットや口の広い清潔なガラス容器で代用できます。移し替えたあとにもとのボトルに戻して注ぐと、見た目もきれいです。ただし古い熟成ワインは空気に触れすぎると風味が壊れることもあるため、短時間にとどめるか、そのまま静かに注ぐ方が無難な場合もあります。
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